電力ひっ迫はなぜ起こる?原因や家庭でできる節電方法を解説

電気の需要と供給のバランスが崩れると、電力ひっ迫状態となります。電力ひっ迫状態が続くと大規模停電につながり、生活に支障が出る可能性があります。
大規模停電を防ぐためには、電力ひっ迫が起こる原因を把握して日ごろから節電を意識することが大切です。本記事では、電力ひっ迫が起こる原因や家庭でできる節電方法を解説します。
電力ひっ迫とは
電力ひっ迫とは、電力需要が大きくなり、供給に余裕がなくなった状態のことを指します。
電力は大量に貯めておくことが難しいエネルギーであるため、供給量を予測して発電しています。しかし、予想外の天候や災害によって急に需要が増加して供給不足となる場合があります。
急な需要増加によって電力ひっ迫が予想される際は、供給余力に応じて準備情報、注意報、警報のいずれかが発令されます。
- 電力需給ひっ迫準備情報:前々日の時点で電力需要に対する供給余力が5%を下回ると予想される場合、18時ごろに送電事業者が発表
- 電力需給ひっ迫注意報:前日の時点で供給余力が5%を下回ると予想される場合には16時ごろに資源エネルギー庁が発令
- 電力需給ひっ迫警報:前日の時点で電力需要に対する供給余力が3%を下回ると予想される場合には、16時ごろに資源エネルギー庁が発令
警報発令や節電要請をしても電力需要に対する供給余力が1%を下回ると予想される場合は、計画停電が実施されます。
計画停電が実施されると、照明や冷蔵庫、電子レンジなどの電力を必要とするものが使えなくなってしまいます。そのため、電力の需要と供給のバランスが保たれるように、日ごろから節電を意識することが大切です。
過去の電力需給ひっ迫警報発令の事例
過去に電力需給ひっ迫警報や注意報が発令されたことがあります。
電力需給ひっ迫警報は2022年3月22日に発令されました。このときに警報が発令された要因として、2022年3月16日に発生した福島沖地震により、多くの火力発電所が緊急停止し、復旧に時間を要したことが挙げられます。
ほかにも、気温の低下が予想を上回ったことや、悪天候による太陽光発電の出力が伸び悩んだことが要因として挙げられます。
また、2022年6月26日には電力需給ひっ迫注意報が発令されました。注意報が発令された要因として、季節外れの猛暑が連日続いたことが挙げられます。この電力需給ひっ迫注意報は6月30日の18時に解除されました。
電力ひっ迫が起こる原因
電力ひっ迫が起こる原因は1つではありません。様々な要因によって電力の需要と供給のバランスが崩れてしまいます。
ここでは、電力ひっ迫がなぜ起こるのか、原因を解説します。
発電所の老朽化や停止
電力ひっ迫が起こる原因のひとつとして、発電所の老朽化や停止によって供給できる電力が不足していることが挙げられます。
2011年3月11日の東日本大震災によって日本の原子力発電所がすべて停止となりました。東日本大震災前に稼働していた60基の原子力発電所のうち、13年が経過した2024年4月時点で再稼働しているのは12基のみです。
また、脱炭素化を進めるために老朽化した火力発電所やCO2を比較的多く排出する石炭火力発電所を廃止しているため、電力の供給不足が生じています。
燃料調達不足
発電するためには石炭や天然ガスなどの燃料が必要です。そのため、石炭や天然ガスなどの燃料調達の不足は、電力ひっ迫の原因となります。
2022年のロシアのウクライナへの侵攻により、化石燃料の輸出国であるロシアからの調達を段階的に制限することになり、世界的にもエネルギー価格が上昇しました。
このようなエネルギー価格の高騰や供給不足により、燃料調達不足になると電力ひっ迫に陥ってしまいます。
記録的な寒波や猛暑の発生
電気は余分に発電して貯めておくことが難しいエネルギーのため、需要量の予測をもとに発電量をコントロールしています。そのため、季節外れの寒波や猛暑といった異常気象は電力をひっ迫する要因となります。
なお、電力の需給状況は、各地域の電気事業者がホームページで公開している「でんき予報」から確認できます。季節外れの寒波や猛暑のような予想外の異常気象が発生した際に、電力ひっ迫を防ぐためには一人ひとりが節電に対する意識を持つことが大切です。
日ごろから「でんき予報」で電力の需要が高まる時間帯や時期を把握しておくと、節電意識を高められます。
家庭でできる節電対策
電力ひっ迫を防ぐためには、一人ひとりが節電方法を把握して対策することが大切です。資源エネルギー庁のデータによると、電力消費量の5割以上をエアコン、冷蔵庫、照明が占めていると公表されています。
そのため、エアコンや冷蔵庫、照明の使い方を見直すことで大幅な節電につながります。それぞれの家庭でできる節電対策を紹介します。
エアコンの使い方を見直す
エアコンの節電をするためには、以下の点を意識することが効果的です。
- 適切な設定温度にする(夏は室温28℃、冬は室温20℃になるようにする)
- 月1、2回を目安にフィルターを掃除する
- カーテンやすだれを使用して日差しを遮り、冷房の使用量を抑える
- 扇風機やサーキュレーターを併用して部屋の空気を循環させる
- 室外機の周囲に物を置かない
- 古いエアコンを買い替える
エアコンの消費電力を抑えるためには、設定温度が重要です。夏の冷房時の温度設定を1℃高くすると約13%の消費電力の削減になり、冬の暖房使用時に温度設定を1℃低くすると約10%の消費電力削減につながります。
また、フィルターが目詰まりしていると冷暖房の効果が下がり、余計な電気を消費するため、月1、2回を目安にフィルターの掃除をすることが大切です。フィルターを定期的に掃除することで、冷房時で約4%、暖房時で約6%の消費電力を削減できるといわれています。
ほかにも、室外機がスムーズに空気を循環できるように室外機の周囲を整理したり、室外機の熱の排出効率を高めるために日除けカバーや植木で日陰をつくったりするのも節電に効果的です。
ただし、日除けカバーや植木が室外機の吹出口を塞いでしまうと冷暖房効率が下がるので注意しましょう。
また、近年のエアコンは10年前よりも省エネ性能が向上しているため、古いエアコンを買い替えることで、消費電力を約17%抑えられます。
エアコンの電気代はどれくらい?つけっぱなしは節約になる?計算方法や節電方法を解説
冷蔵庫の使い方を見直す
冷蔵庫の節電ポイントは、以下のとおりです。
- 熱いものは冷ましてから入れる
- 冷蔵庫の中を整理して冷気を循環しやすくする
- 庫内の設定温度を適切に調整する
- 古い冷蔵庫を買い替える(近年の冷蔵庫は10年前と比べて約40〜47%省エネ)
温度が高いものを庫内に入れると冷蔵庫が無駄な電力を消費してしまうため、熱いものは冷ましてから入れることが大切です。また、冷気が循環しやすくなるように冷蔵庫の中を整理したり、頻繁に出し入れする食品を手前に置いて扉を空ける時間を短くしたりすることも節電につながります。
ほかにも、食品の傷みに注意して庫内の温度を控えめに設定すると消費電力が小さくなります。近年の冷蔵庫は10年前に比べて約40〜47%省エネ性能が向上しているため、古い冷蔵庫を使っている場合は買い替えも検討してみましょう。
蛍光ランプやLEDランプに取り替える
照明の消費電力を抑える際は、以下の点を意識しましょう。
- 白熱電球を蛍光ランプやLEDランプに取り替える
- 無駄な電気を消して点灯時間を短くする
白熱電球を電球形LEDランプに取り替えることで、約86%の省エネになります。電球の消費電力や点灯時間によっても異なりますが、年間約3,000円以上の節約につながる場合もあります。
また、点灯時間を短くすると消費電力を抑えられるため、必要のない電気はこまめに消すことを心がけましょう。
まとめ

電力ひっ迫は、発電所の老朽化や燃料の調達不足が原因で起こります。また、電気は余分に発電してためておくことが難しく、需要量の予測をもとに発電量をコントロールしているため、季節外れの寒波や猛暑となったときに電力ひっ迫状態となる可能性があります。
電力ひっ迫を防ぐためには、一人ひとりが日ごろから節電を意識して電気を使うことが大切です。家庭の電力消費量の5割以上を占めるエアコン、冷蔵庫、照明を中心に使い方を見直してみましょう。
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