電力自由化の概要・目的

電力自由化とは、消費者が電力会社や料金プランを自由に選択できるようになることです。

電力が自由化されるまで、一般家庭向けの電気は各地域の電力会社が発電・供給し、法律で定められた方法によって電気料金が決定されていました。

電力システムが大きく改革されるきっかけとなったのは、2011年3月11日に起きた東日本大震災などを背景に、電気が足りない地域へ柔軟に供給する仕組みを整備する必要性や、電気料金を最大限抑制する必要性などが高まったことです。

そこで、電力事業に市場競争を導入し、電気料金の引き下げや資源配分の効率化などを図る目的で、2016年4月1日に電力自由化が導入されました。

なお、2017年4月にはガス自由化もスタートし、電気と同様に様々なプランが選べるようになっています。

新電力とは

「新電力」とは、従来の一般電気事業者(各地域の電力会社)とは異なり、電力自由化によって新しく誕生した電力事業者やサービスのことです。

電力自由化がスタートし、多くの新電力が誕生しましたが、電気を供給する仕組み自体は変わっていません。新電力も、東京電力や関西電力などの既存の送配電ネットワークを使って送電しているため、新電力を選んでも電気の品質や安定性は従来の一般電気事業者と同じです。

また、新電力が倒産しても、従来の各地域の電力会社がサポートを行うことになっているため、直ちに停電する心配はありません。

なお、経済産業省によると、全販売電力量に占める新電力のシェア(低圧分野)は、2023年7月時点で約26.1%を占めています。

電力自由化のメリット

電力自由化によって様々な企業が電力事業に参入しましたが、私たち一般家庭にはどのような影響をもたらしたのでしょうか。電力自由化による主なメリットを紹介します。

  • 電力会社を自由に選べる
  • 電気料金を抑えられる
  • スマートメーターの普及で使用量を把握しやすくなった

電力会社を自由に選べる

2016年4月1日以降、電力自由化によって電力会社を自由に選べるようになりました。料金プランやサービス内容は電力会社によって異なるため、ライフスタイルに応じてよりおトクな料金プランを選択できます。

また、普段から貯めているポイントサービスに対応した電力会社や、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱など)を中心に発電を行う電力会社を選ぶことも可能です。さらに、お近くの事業者から電気を購入すれば、地域経済の活性化にも貢献できます。

電気料金を抑えられる

電力自由化後、新電力の参入で競争が激しくなり、様々な料金プランが登場しました。そのため、複数の電力会社を比較・検討する、またはライフスタイルにあわせてプランを選ぶことで、電気料金を抑えられる可能性があります。

料金プランの例

  • 時間帯・曜日・季節に応じて料金単価が変わるプラン
  • 他サービス(ガスや通信など)とのセット販売による割引プラン
  • 長期契約による割引プラン
  • 節電実績に応じて割引されるプラン

電力会社のなかには、基本料金を0円(※1)とするところもあります。

(※1)基本料金を0円とし、使用に応じた従量料金型の料金制度などの場合。

スマートメーターの普及で使用量を把握しやすくなった

スマートメーターの普及で使用量を把握しやすくなった

電力自由化によってスマートメーターが普及し、利用者が電気の使用量を把握しやすくなったこともメリットのひとつです。

スマートメーターとは、電気使用量を自動的に検針する通信機能を備えた電力メーターです。従来の機械式メーターに代わる新しい電力メーターのことで、電力会社を切り替える家庭に優先的に設置されています。

従来のメーターでは、検針員が毎月現地で検針し、1カ月間の総使用量を計測していました。一方、スマートメーターでは、毎日30分ごとに電気の使用量を自動で計測できます。

消費者は、電力会社のマイページなどで時間帯ごとの電気使用量を確認できるため、電気の使い方を効果的に見直せます。また、検針値を遠隔で確認できるため、引越しの際などの立会いが不要になるなど、手続きの負担も軽減されました。

電力自由化のデメリット

電力自由化のデメリット

電力自由化後、多くのプランからご自身にとって最適なプランを選べるようになったのは大きなメリットでしょう。また、新電力に切り替えても電気の品質や安定性はこれまでと変わりません。

一方で、以下のデメリットには注意が必要です。

  1. プランの見極めが難しい
  2. 違約金がかかる可能性がある
  3. 市場連動型のプランは市場価格の影響を受けやすい

プランの見極めが難しい

電力自由化以降、様々な企業が電力事業に参入しました。経済産業省によると、2024年6月20日時点で電力会社は729事業者にのぼります。多くの電力会社のなかからご自身で契約する会社やプランを選ばなければならず、難しいと感じる方もいるでしょう。

料金体系やプランは電力会社によって異なるため、契約先を切り替えても電気料金が安くなるとは限りません。料金体系やプランをよく理解し、シミュレーションを行ったうえで電力会社を決めることが大切です。

違約金がかかる可能性がある

電力会社の切り替えに伴って契約中の電力会社を解約する際、契約期間が一定期間未満の場合などに違約金が発生する可能性があります。

独立行政法人国民生活センターには、電力会社の切り替えに関する相談が多く寄せられています。電話で「電気料金が安くなる」と勧誘されて契約したが安くならず、解約してほかの電力会社に切り替えたが、違約金を請求されたなどのトラブルも少なくありません。

違約金の有無や発生する条件、金額は電力会社によって異なるため、必ず事前に確認しましょう。

市場連動型のプランは市場価格の影響を受けやすい

市場連動型とは、単価が市場価格と連動して変動するプランです。市場連動型のプランは、多くの電力会社が電気を仕入れている「一般社団法人 日本卸電力取引所(JEPX)」の取引価格に応じて単価が変動します。需要と供給の状況による価格変動の影響を受けるため、夏場など市場価格が一時的に高騰した際に、電気料金が割高になることがあります。

市場連動型のプランには、年間を通すと一般的な電気料金プランと比べて単価が安くなりやすいなどのメリットもあるため、メリット・デメリットを踏まえて慎重に検討しましょう。

なお、市場連動型に対し、電力量料金(使用電力量に応じて決まる料金)の単価が固定されている従来のプランを「従量電灯型」と言います。

電力会社の選び方

電力自由化によって、多くの新電力会社が市場に参入しました。ガス事業者や通信事業者、鉄道会社、住宅メーカーなど異業種からの参入も進んだため、電力会社を選びきれない方もいるでしょう。

そこで、電力会社を選ぶときのポイントを解説します。

  • 電力会社の供給エリアを確認する
  • ライフスタイルに応じたプランを選ぶ
  • 再生可能エネルギーで発電する電力会社を選ぶ

電力会社の供給エリアを確認する

契約を検討している電力会社の供給エリアに、お住まいの地域が含まれているかどうかを確認しましょう。

電気の供給エリアは、電力会社によって異なります。また、エリアによって利用できる料金プランに違いがある電力会社もあるため、注意が必要です。

ライフスタイルに応じたプランを選ぶ

電力会社のプランは、時間帯や曜日などで単価が変動するプランや、セット割引・長期契約割引があるプランなど多彩です。

たとえば、在宅勤務で昼間に電気を多く使う方は、日中の単価が安くなるプランを選べば電気料金を抑えられる可能性があります。また、電気とガスをまとめて契約し、セット割引を受けるのも手段のひとつです。

複数の電力会社・プランを比較し、現在の生活環境や他サービスの利用状況にあったものを選択しましょう。

再生可能エネルギーで発電する電力会社を選ぶ

近年、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを重視する電力会社が続々と増えています。

発電設備の設置が難しい家庭でも、電力会社を切り替えるだけで環境に配慮した電気を利用できます。再生可能エネルギー由来の電気もこれまでと同じ送配電ネットワークで届けられるため、契約の際に大がかりな設備を設置する必要はありません。

電力会社によって再生可能エネルギーの比率が異なるため、あわせて確認しましょう。

ポイント制度などのサービスで選ぶ

電力会社によっては、電気料金の支払いでポイントが貯まるサービスを導入しているところもあります。

普段使っているポイントをより効率的に貯めたい方や、ポイントで電気料金の負担を抑えたい方は、こうしたサービスを提供している電力会社を選ぶと良いでしょう。

電力自由化に関するよくある質問

電力会社の切り替えを検討している方に向けて、電力自由化に関するよくある質問を紹介します。

  • マンションでも電力会社を切り替えられる?
  • オール電化でも電力会社を切り替えられる?

マンションでも電力会社を切り替えられる?

マンションに住んでいる場合も、個別で電力会社と契約していれば切り替えが可能です。

ただし、マンションによっては、管理組合などを通じて一括で電気の契約を締結している場合があります。一括で契約している場合は、個別で切り替えられない可能性があるため、管理組合などに確認しましょう。

オール電化でも電力会社を切り替えられる?

オール電化でも電力会社の切り替えが可能です。電力会社によっては、オール電化向けの料金プランを提供しているところがあります。

ただし、オール電化向けの料金プランがない電力会社に切り替えると電気料金が高くなる可能性もあるため、慎重に検討しましょう。

まとめ

2016年4月1日の電力自由化によって、私たち消費者は電力会社や料金プランを自由に選べるようになりました。時間帯に応じて単価が変動するプランや割引プラン、ポイント制度など、各社が多彩なプラン・サービスを提供しています。

料金体系やプラン内容を正しく理解し、ご自身のライフスタイルにあった電力会社に切り替えれば、電気料金を抑えられる可能性があります。

また、2017年にはガス自由化もスタートし、電気と同様に契約先やプランを自由に選べるようになっています。電気とあわせてガスの見直しも検討しましょう。

利用しているスマホやクレジットカードと同じ電力会社を利用すれば管理が容易となり、ポイントが貯まるなど、おトクなライフスタイルを送ることもできます。

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鶏冠井 悠二(かいで ゆうじ)

1級FP技能士・CFP・証券外務員一種・投資診断士・節約生活スペシャリスト・クレジットカードアドバイザー®

コンサルタント会社、生命保険会社を経験した後、ファイナンシャルプランナーとして独立。「資産形成を通じて便利で豊かな人生を送って頂く」ことを目指して相談・記事監修・執筆業務を手掛ける。担当分野は資産運用、保険、投資、NISAやiDeco、仮想通貨、相続、クレジットカードやポイ活など幅広く対応。現在、WEB専門のファイナンシャルプランナーとして活動中。