深夜電力とは

深夜電力とは、電力会社の指定する夜間から明け方までの時間帯を対象に、ほかの時間帯よりも割安な電気代が設定された電気プランのことです。

具体的なプラン内容は電力会社によって異なりますが、日中の時間帯に対応する従量電灯の電気プランに追加して契約するのが一般的です。

深夜電力と夜間電力の違い

電力会社によっては、深夜電力とよく似た「夜間電力」と呼ばれる電気プランがあります。どちらも、夜間に使う電気代が割安に設定されているなど共通点もありますが、それぞれのプランには次のように明確な違いがあります。

深夜電力と夜間電力の主な違い

深夜電力 夜間電力
  • 日中に適用される電気プランに追加して、割安な夜間電力として契約する
  • 多くが電気温水器など夜間に電力を消費する特定の機器に電力の利用が制限される
  • 夜間を含めた時間帯別の電気代が設定されているひとつの電気プランを契約する(※1)
  • 一般的な電気プランと同じく、電気の使い方に制限がない

(※1)電力需要の高まる日中の電気代はやや高めに、電気があまり使われない夜間の電気代をやや低めに設定される

深夜電力の契約に適したケース

夜間から明け方にかけて電気代を抑えられる深夜電力ですが、先述のとおり、多くのプランで夜間蓄熱機器に電気の利用先が限定されています。対象の機器がなければ、深夜電力を契約できない可能性があります。

深夜電力の契約は、次のような夜間蓄熱機器を持つ家庭を前提としています。

  1. エコキュート(貯湯式ヒートポンプ給湯機で、電気とガスのハイブリッド機器を含む)
  2. 電気温水器(貯湯式電気給湯器)
  3. 蓄熱暖房器(蓄熱材に蓄熱した熱を利用する暖房器)
  4. 蓄熱床暖房(蓄熱材に蓄熱した熱を利用する床暖房)

いずれの機器も、深夜電力の電気代の適用は、電力会社が指定する夜間時間帯での利用が対象です。

オール電化住宅にお住まいでこうした蓄熱機器を多く導入する家庭であれば、深夜電力が夜間の電気代の節約になると考えられます。

深夜電力の仕組み

電気の使いみちが蓄熱機器に特定されるとは言え、なぜ深夜電力は電気をおトクに使えるのでしょうか。深夜電力の仕組みを詳しく解説します。

深夜電力の電気代が安くなる理由

多くの人は日中に活動しており、1日の電力使用量は人の活動量に比例して時間とともに変化します。

電気事業連合会のデータによると、2024年1月24日の電力使用量は、朝10時がピークで、オフピークで最も低かったのは深夜2時です(※2)。朝から昼にかけて高まった電力使用量は、夜間から明け方にかけて下がっています。

いつでも安定した電力供給ができるように、電力会社はピーク時の電力を想定した発電設備を備えています。しかし、日中は供給量が発電能力の9割近くに達する日もある一方で、夜間は発電能力の5~7割に収まって、電力に余剰が出ています(※3)。

そこで、余りがちな夜間の電力を割安で提供することで日中の電力供給を抑え、1日を通じて安定した電力供給を実現できるように考えられたのが深夜電力です。

夜間の発電能力を有効活用できる深夜電力は、電気代を割安にしてもなお、電力会社にもメリットがあると考えられます。

(※2)出典:電気事業連合会「日本の電力消費」
(※3)出典:経済産業省 資源エネルギー庁「電気需要平準化時間帯について(案)」

深夜電力の対象となる時間

深夜電力の対象となる時間は電力会社によって異なりますが、午後11時~翌日の午前7時までの8時間とするプランが多いようです。

深夜電力と同じように夜間の電気代を割安とする夜間電力を含むプランでも、午後11時~翌日の午前7時までを夜間時間帯とするプランが一般的です。しかし、夜間電力の方が、時間帯の設定にバラつきがあり、午後9時〜翌日の午前9時までと設定しているプランもあります。

深夜電力の選択肢

同じ電力会社の提供する深夜電力であっても、プランの内容によって、次のように2~3種類に分かれている場合があります。

深夜電力の種類 プランの内容
深夜電力A キッチンや洗面所などで使う小型電気温水器(0.5kWh以下)などの利用に特化したプラン
深夜電力B 一般的な夜間蓄熱機器などの利用に適したプランで、基本料金が設定されている場合が多く未使用でも基本料金が発生する
深夜電力C 深夜電力Bに準じた内容で、午前1時~6時までのように対象時間を短くして基本料金を抑えたプラン

電力消費量の小さい機器を使う予定なら深夜電力A、一般的な蓄熱機器の利用なら深夜電力B、深夜電力をさらに効率良く活用して節約を目指すなら深夜電力Cのように、目的に応じて使い分けると良いでしょう。

現在、深夜電力が廃止されつつある理由

現在、深夜電力が廃止されつつある理由

夜間から明け方にかけて蓄熱機器を使うなら、深夜電力を契約すると節約につながる可能性があります。

しかし、2024年8月現在、すべての電力会社で深夜電力の新規受付は停止されている状況で、以前からの契約者の更新のみ可能とする電力会社ばかりです。

また、深夜電力にとどまらず、時間帯別料金の夜間電力も以前のような選択肢がなく、縮小傾向にあります。

なぜ深夜電力や夜間電力が廃止されつつあるのか、その背景を紹介します。

太陽光発電や省エネ家電の普及

近年、個人での太陽光発電の設置や省エネ家電の普及が進んでいます。その結果、1日の電力消費量の変化は年々ゆるやかになっており、日中の電力需要は減少傾向にあるようです。

特に自宅に太陽光発電を備える家庭では、2019年より固定価格買取制度(FIT制度)が終了する事例が順次発生しており、発電した電気を自宅で使う流れが今後も強まると予想されています。

こうした時代の変化から、深夜電力や夜間電力の「電力需要は日中に高くなり夜間に低くなる」との前提が成り立たなくなり、電力会社は電気プランの見直しを迫られました。

その結果、電力会社各社で、日中の電気代を抑えて夜間の電気代を引き上げたプランへと変更が進められています。

深夜電力や夜間電力の廃止は、私たちの生活を取り巻く環境の変化を反映したものと言えるでしょう。

夜間の電力需要が増加

戸建住宅を中心に、エコキュートや電気式温水器など、夜間に蓄電する電気機器の普及が進んでおり、夜間の電力需要が高まっています。

たとえば、据置型の蓄熱機器(家庭向け・法人向けを含む)を見ると、2013年には約3万台だった出荷台数が2023年時点で93万台を超えており、わずか10年で急速に広まったことがわかります(※4)。

電気事業連合会によると、1日あたりの電力消費量は2001年には高低差が約9,400万kWもありましたが、2024年には約4,300万kWと、およそ半分にまで減っています(※5)。

日中に偏っていたはずの電力消費も今では昼夜の差がほとんどなくなり、時間帯ごとの不均衡は改善されつつあります。電気代を割安にして夜間の電力消費を促す必要がなくなったことも、深夜電力や夜間電力が廃止に向かう理由のひとつと考えられます。

(※4)出典:日本電機工業会「JEMA 蓄電システム自主統計 2023 年度出荷実績」
(※5)出典:電気事業連合会「日本の電力消費」

電気代の節約方法

電気代をおトクに使える深夜電力や夜間電力は廃止される傾向にあり、今後は時間帯別料金に頼った電気プランでの節約がむずかしくなるでしょう。

こうした状況を踏まえたうえで、電気代の高騰にも負けない節約アイデアを紹介します。

1 家電の使い方を見直す

エアコンや冷蔵庫、照明、洗濯機、テレビなど、毎日の暮らしに欠かせない家電は、ちょっとした工夫で消費電力を抑えられる可能性があります。

とりわけエアコンは家庭に占める消費電力の3割以上を占めるため、節電効果を実感しやすいでしょう。たとえば、エアコンの場合、次のような使い方を心がけるだけでも節電につながります。

  • 冷房は28℃、暖房は20℃を目安に設定温度を見直す
  • できるだけ外気の入り込まない使い方を心がける
  • サーキュレーターや扇風機で空気を循環させる
  • フィルターは2週間に1回を目安に定期的に掃除する
  • 室外機の吹き出し口をふさがない

エアコン以外の家電も、一つひとつの節電効果はエアコンほど大きくないものの、適切な使い方を身につけることで、毎月の電気代を下げると期待されます。

家電 節約につながる使い方のポイント
冷蔵庫
  • 庫内の温度は控えめに設定する
  • ドアの開閉回数を減らす
  • こまめに整理して、食材の詰めすぎに注意する
  • 熱い料理は十分に冷ましてから入れる
照明
  • LEDに切り替える
  • 使わないときはきちんと消してムダな点灯時間を減らす
  • 照明やカサを掃除して輝度を上げる
  • 利用シーンにあわせて明るさを調整する
洗濯機
  • 洗濯機の容量にあわせてまとめ洗いをする
  • 洗剤を入れすぎない
  • 外干しや室内干しを併用して乾燥機の利用を減らす
テレビ
  • 待機電力の消費を防ぐために消すときは主電源を切る
  • 画面設定で省エネモードを利用する
  • 画面のホコリをこまめに掃除する

毎日の生活で活用できる電気代の節約方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。

電気代を節約するには?すぐできる節約術7選や効果的な方法をわかりやすく解説

2 最新のエコ家電に買い替える

同じ家電を長く使っているなら、思いきって最新のエコ家電に買い替えましょう。

家電製品の技術は日々進化を続けています。10年違えば、新しい機能はもちろん、消費電力を大きく削減できるなど、省エネ性能が飛躍的に向上していると考えられます。そのため、エコ家電に変えるだけで、電気代を節約できる可能性があります。

たとえば、冷蔵庫の場合、2013年と2023年の製品を比べると年間の電気代が約28〜35%もおトクになるとのデータもあります(※6)。

(※6)出典:環境省「省エネポータルサイト」

3 電気代の支払方法を変える

電気代の支払方法には、振込用紙(現金)・金融機関の口座引き落とし・クレジットカードなどがあります。クレジットカード払いを選ぶと、支払った電気代がカードのポイント獲得につながり、実質的な節約になります。

さらに、楽天でんきのように、貯まった楽天ポイントを電気代に充当できる便利なサービスを提供する電力会社もあります。

電力会社によって電気代の支払方法は様々です。まずはご利用中の電力会社がクレジットカードに対応しているか確認しておきましょう。

4 電力会社やプランを見直す

電気代が気になったら、節約と同時に、電力会社やプランの見直しも進めましょう。

2016年の電力自由化以降、ご家庭の電気の使い方にあわせて様々な電力会社を自由に選べるようになりました。

深夜電力や夜間電力は廃止の方向ですが、ほかにも基本料金無料、ガスやインターネット回線などとのおトクなセット割、サービスの充実など、特色ある電力会社がたくさんあります。

ご自身にあった電力会社やプランに切り替えれば、電気代を自然と削減できるはずです。

まとめ

まとめ

深夜電力は、電気温水器など家庭用蓄熱機器の夜間利用を目的とした電気プランです。電力需要の少ない夜間から明け方にかけて、割安な電気代でおトクに蓄電したいご家庭に適しています。

ただし、近年は太陽光発電の普及や夜間の電力消費量の増加などによって事情が変わり、深夜電力は新規申込みができない状況です。同じく夜間の電気代が割安になる夜間電力を含めて、「夜の電気代がおトクになる」プランは廃止に向かっています。

高騰が続く電気代を抑えるためには、深夜電力に頼らず、ご家庭で節電への工夫を進めることが大切です。

節約につながるとして期待されるのが、電力会社やプランの見直しです。魅力ある料金体系やおトクなサービスのある電力会社、ライフスタイルにあったプランへ切り替えるだけで、今よりも電気代を削減できる可能性があります。

楽天でんきなら、利用料金200円につき1ポイント、ガス(※7)とセットで100円につき1ポイントの楽天ポイントを貯められます(※8)(※9)。さらに、貯まった楽天ポイントは電気料金として充当も可能なので、実質的な節約にもつながります(※10)。

「料金シミュレーション」を使えば、年間のおトク額や獲得できる楽天ポイントがどれくらいになるかを簡単にご確認いただけます。現在の電気料金や契約情報を入力すれば誰でも利用できるため、ぜひご活用ください。

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(※7)楽天ガスは都市ガス(東京ガス、東邦ガス、関電ガス)が提供対象エリアです。詳しくはガス対象エリアページをご確認ください。
(※8)楽天ポイント進呈の基準となる金額は、電気料金とガス料金の税抜価格です。
(※9)楽天ポイントの進呈対象は、クレジットカードでお支払いいただいた料金となります。
(※10)貯まったポイントは50ポイント(50円相当)からご利用料金に充当できます。

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鶏冠井 悠二(かいで ゆうじ)

1級FP技能士・CFP・証券外務員一種・投資診断士・節約生活スペシャリスト・クレジットカードアドバイザー®

コンサルタント会社、生命保険会社を経験した後、ファイナンシャルプランナーとして独立。「資産形成を通じて便利で豊かな人生を送って頂く」ことを目指して相談・記事監修・執筆業務を手掛ける。担当分野は資産運用、保険、投資、NISAやiDeco、仮想通貨、相続、クレジットカードやポイ活など幅広く対応。現在、WEB専門のファイナンシャルプランナーとして活動中。