石油ファンヒーターはどんな暖房器具

石油ファンヒーターは、灯油を燃焼させて暖めた空気をファンで送り出して部屋を暖める暖房器具です。

石油ファンヒーターの主な特長は以下になります。

  • 暖房能力が高く、部屋全体をすばやく暖められる
  • 一定の加湿効果が見込まれる
  • 灯油を使うため、給油の手間や換気の必要がある
  • ボタンひとつでON・OFFが可能で操作しやすい

石油ファンヒーターは、燃料として灯油を使うため、スイッチを入れた直後からパワフルに部屋全体が暖まります。また、灯油は燃焼と同時に水蒸気を発するため、乾燥しにくいのも魅力です。

灯油を使うため定期的な給油や換気が必要になる点がデメリットともなりますが、同じく灯油を使う石油ストーブとは違い、ボタンひとつで操作できるため使いやすさにも優れています。

セラミックファンヒーターやガスファンヒーターとの違い

「ファンヒーター」と名がつく暖房器具には、石油ファンヒーターのほか、セラミックファンヒーターやガスファンヒーターもあります。

セラミックファンヒーター

スイッチを押すだけですぐに温風が出る手軽さとともに、灯油などの燃料を使わないため給油の手間がなく、空気を汚さない安全性の高さも魅力です。

電気だけを熱源とするため、石油ファンヒーターに比べると暖房効率はやや低めですが、必要なときに必要な場所で使えるようにコンパクトに設計された製品が多く、様々なシーンで使えます。

灯油やガスを使わないため燃料費はかかりませんが、電気代はほかのファンヒーターよりも高めです。

ガスファンヒーター

ガスを使った高い暖房能力で、石油ファンヒーターと同様、部屋全体を暖めるのに適した暖房器具です。ガスの燃焼によって水蒸気が発生するため、空気が乾燥しづらいメリットもあります。

石油ファンヒーターのように給油の手間はありませんが、ガスを供給するガス栓がなければ使えず、使う場所が限定されます。

石油ファンヒーターにかかる電気代と灯油代はどれくらい?

灯油を燃料としたパワフルな暖房能力は、石油ファンヒーターの魅力のひとつです。しかし、スイッチひとつで部屋がすぐ暖まるとなると、電気代が気になる方もいるでしょう。

石油ファンヒーターの電気代は、実際のところ、さほどかかりません。しかし、燃料量に応じた灯油代がかかるため、電気代と灯油代を暖房費としてトータルで考える必要があります。

ここでは、石油ファンヒーターにかかる電気代と灯油代を具体的な数字をまじえて解説します。

石油ファンヒーターの電気代

家庭で使っている家電の電気代は、ご自身でも簡単に計算できます。

  • 電気代(円)=消費電力(W)÷1,000(※1)×電気代単価(31円/kWh)×使用時間(h)

電気代単価は契約する電力会社やプランによって異なりますが、ここでは公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会が発表している電気代の目安単価で、主要電力会社10社の平均単価である31円/kWh(税込)を使用します。

それでは、現在販売されているある石油ファンヒーター(木造10畳・コンクリート13畳までに対応)を運転(強)したときの消費電力9.5Wをもとに、1時間あたりの電気代を計算してみます。

  • 1時間あたりの電気代(円)=9.5(W)÷1,000×31(円/kWh)×1(時間)=0.29円

1日8時間使ったときの1カ月(30日)の電気代は、次のようになります。

  • 1カ月あたりの電気代(円)=0.29(円)×8(時間)×30(日)=約71円

この計算結果から、石油ファンヒーターの1カ月あたりの電気代は、100円に満たないほど低いと考えられます。

日頃使っている電気代をご自身で計算する方法、電気代を節約するアイデアは、以下の記事でも詳しく解説しています。

1kWhあたりの電気代はいくら?電気代の内訳や節電方法を解説

(※1)「1,000」の除算は「W(ワット)」から「kW(キロワット)」への単位変換のために必要

石油ファンヒーターの灯油代

次に、石油ファンヒーターの燃料として使われる灯油のコストを計算します。

  • 灯油代(円)=燃料消費量(L/h)×灯油代単価(円/L)×使用時間(h)

灯油代単価は日々値動きがありますが、ここでは経済産業省資源エネルギー庁が公表しているデータより、117.8円/L(2024年12月16日時点の全国平均)とします(※2)。

電気代の計算と同じ石油ファンヒーター(木造10畳・コンクリート13畳までに対応)の燃料消費量「0.057~0.350L/h」をもとにすると、1時間あたりの灯油代は次のように計算できます。

  • 1時間あたりの灯油代(円)=0.057~0.350(L/h)×117.8(円/L)×1(時間)=6.71~41.23円

1日8時間使用した場合、1カ月あたりの灯油代は約1,610~9,895円となり、灯油を使う量によって、暖房費が大きく変わるとわかります。

(※2)経済産業省資源エネルギー庁「 石油製品価格調査」

石油・セラミック・ガス、ファンヒーター3種の電気代を比較

先述のとおり、「ファンヒーター」は熱源によって3種類に分かれます。そこで、石油ファンヒーター、セラミックファンヒーター、ガスファンヒーター、それぞれの暖房費(電気代と燃料代)を先ほどの計算式をもとに比べてみます。計算結果は以下のとおりです。

ファンヒーターごとの暖房費(電気代と燃料代)の違い

ファンヒーターの種類 1カ月あたりの電気代 1カ月あたりの電気代
石油ファンヒーター 約71円 約1,610~9,895円
セラミックファンヒーター 約8,928円
ガスファンヒーター 約149円 約6,866円

まず、セラミックファンヒーターの電気代を計算します。木造6畳・コンクリート8畳までに対応するスタンダードモデルの製品を運転(強)したとき、1時間あたりの電気代は次のとおりです。

  • 電気代(円)=1,200(W)÷1,000×31(円/kWh)×1(時間)=37.2円

セラミックファンヒーターは使う場所を限定したコンパクトな製品が多いため、毎日8時間使い続けることは少ないかもしれませんが、仮に1カ月(1日8時間)使ったときの電気代は約8,928円となります。

ガスファンヒーターは、木造12畳・コンクリート16畳までに対応するスタンダードモデルのスペックから、電気代とガス代(※3)を計算します。ガス代は、灯油代と同じように、燃料消費量(㎥)とガス代単価(円/㎥)を掛けあわせて求めます。

  • 電気代(円)=20(W)÷1,000×31(円/kWh)×1(時間)=0.62円
  • ガス代(円)=0.126(㎥)×227.1(円/㎥)(※)×1(時間)=28.61円

1日8時間の使用を1カ月続けると、ガスファンヒーターの電気代は約149円、ガス代は約6,866円となります。使い方によっては、石油ファンヒーターの暖房費を上回ることもあるでしょう。

(※3)新電力ネット(一般社団法人エネルギー情報センター)「全国のガス料金単価(家庭用)」

石油ファンヒーターの電気代はエアコンより安い?

石油ファンヒーターの電気代はエアコンより安い?

寒い冬に部屋全体を暖めたいときに役立つ暖房器具は、石油ファンヒーターのほかにエアコンもあります。

エアコンはセラミックファンヒーターのように電気だけを熱源とする暖房器具ですが、石油ファンヒーターとは暖房費にどれくらいの違いがあるのか、確認しておきましょう。

石油ファンヒーターとエアコンのランニングコストはほぼ変わらない

冬の暖房器具として今や欠かせない存在となったエアコンは、石油ファンヒーター同様、部屋全体をしっかり暖める暖房能力の高さが魅力です。しかし、電気だけを熱源とするため、石油ファンヒーターに比べると電気代が気にかかる方も多いでしょう。

そこで、先ほど計算で用いた石油ファンヒーターと条件の近い、木造10畳前後に対応するエアコン(消費電力890W)の電気代を計算します。

  • 電気代(円)=890(W)÷1,000×31(円/kWh)×1(時間)=27.59円

このエアコンを1日8時間使ったときの1カ月あたりの電気代は、約6,621円です。先ほどの石油ファンヒーターの計算結果(電気代約71円・灯油代約1,609~9,878円)と比べても、明確にどちらの方が安いとは言い切れません。

石油ファンヒーターもエアコンも、使い方や使う環境、その時点の電気代単価や灯油代単価などにより変化します。そのため、一般的な範囲での使用であれば、暖房費として大差はないと考えられます。

石油ファンヒーターはエアコンとの使い分けがおすすめ

電気代と灯油代を含む暖房費で考えると、石油ファンヒーターとエアコンにはランニングコストにあまり差はないと考えられます。しかし、それぞれに特長ある暖房器具のため、状況に応じて使い分けることで、結果として電気代や灯油代を抑えられると期待されます。

エアコンと石油ファンヒーターをどちらもお持ちの場合、たとえば次のような使い分けが考えられます。

【部屋の乾燥が気になるとき】
灯油を1L燃焼させると、およそ1Lの水が発生します。そのため、石油ファンヒーターを使うと、部屋を暖めるとともに加湿もできます。エアコンは使うほど部屋の乾燥が進みやすいため、ノドや鼻、肌の乾燥が気になるときは石油ファンヒーターがおすすめです。

【部屋の温度を安定させたいとき】
部屋を暖めはじめるときは石油ファンヒーターで一気に室温を上げて、室温が安定したらエアコンの自動運転に切り替えましょう。エアコンは、室温が低いと設定温度に達するまでに電気代がかかります。しかし、設定温度に達するとムダな電力を消費しません。

ほかにも、石油ファンヒーターは足元から暖まる、設置場所を移動できるなど、エアコンとの違いがあります。こうした違いに注目して、効率良く、便利に部屋を暖めましょう。

石油ファンヒーターの暖房費を節約するポイント

寒さが苦手な方にとって頼りになる石油ファンヒーターですが、電気代はともかく灯油代に負担を感じる方もいるでしょう。そこで、石油ファンヒーターの暖房費をできるだけ抑えるポイントを7つ紹介します。

家庭の電気代を節約するアイデアは、以下の記事でも詳しく解説しています。

電気代を節約するには?すぐできる節約術7選や効果的な方法をわかりやすく解説

①室温は20℃を目安に適温を心がける

室温の感じ方には個人差がありますが、WHO(World Health Organization/世界保健機関)では、冬の室温として18℃以上が推奨されています。日本では、環境省が暖房中の室温の目安を20℃とし、「19℃を目途に過度にならないように」との指針を出しています。

石油ファンヒーターを使うときも、健康や環境への配慮を考慮した室温「18~20℃」を目安にすると良いでしょう。部屋が暖まりすぎないように注意すれば、灯油の消費も抑えられます。

製品によりますが、適温に達すると自動で運転をセーブしたり消灯したりする「節約モード」を活用すると、室温や灯油の消費量をコントロールするのに役立ちます。

②早めにスイッチをOFFにする

石油ファンヒーターを使うと、灯油の燃焼によって部屋が加湿されます。エアコンのように空気が乾燥しないため、石油ファンヒーターで暖められた部屋の温度は下がりにくい傾向があります。

そのため、暖房が不要になるタイミングより少し早めにスイッチを切っても、体を冷やすことなく、暖房費を節約できます。お出かけや就寝の15分前が目安です。タイマー機能を上手に活用しましょう。

また、先述のとおり、上がった室温をキープするタイミングで、エアコンに切り替えるのもおすすめです。快適な温度をキープする目的でエアコンを使うと、電気代を抑えられて経済的です。

③窓や壁が背になるように設置する

石油ファンヒーターは、背面のフィルターから冷気を吸い込み、前面から温められた空気を部屋に送り出す仕組みです。

そのため、冷気の集まりやすい大きな窓のそばや壁面などを背にして設置すれば、部屋の空気が効率良く循環し、部屋全体がよりすばやく暖まります。

④部屋から熱が逃げるのを防ぐ

ドア(扉)や窓から熱が逃げると、石油ファンヒーターでいくら部屋を暖めても、暖房効率は上がりません。実際、暖房により温まった空気のうちおよそ20%は、すきま風で失われるとされています。

たとえば次のような方法で、部屋から熱が逃げるのを防ぎましょう。

  • 日中は日差しが入るようにカーテンを開ける
  • 日没後は熱が逃げないようにカーテンを閉める
  • ドア(扉)や窓のすきまをふさぐ
  • 窓に断熱フィルムを貼る
  • 遮熱性の高いカーテンを選ぶ

⑤フィルターをこまめに掃除する

石油ファンヒーターの暖房性能をじゅうぶんに発揮させるには、フィルターのこまめな掃除が重要です。掃除機でホコリを取る、ぬるま湯につけて目詰まりを取るなどして、空気のとおり道を保ちましょう。

特に本体背面に備わったフィルターは、部屋の冷気を吸い込む大切な役割を果たします。目につきにくい場所のため、手入れを忘れないように注意してください。

⑥部屋の広さにあった製品を選ぶ

石油ファンヒーターの暖房費を抑えるには、使う部屋の広さにあわせて製品を選ぶことも大切です。

おすすめは、実際よりやや広めの部屋に対応するパワー(消費電力)を持つ製品です。パワーにゆとりがあれば、天井の高さや壁の断熱性などの違いにかかわらず、スピーディに部屋が暖まります。タイマーや節約モードを活用すれば、確実にムダを削減できるでしょう。

また、暖房能力の高い製品ほど給油タンクも大きい傾向があるため、給油の回数を減らすメリットも期待されます。

⑦電力会社やプランを見直す

石油ファンヒーターをはじめ、冬は暖房費にお金がかかります。ご家庭の暖房費を少しでも抑えたいなら、電力会社や電気料金プランの見直しがおすすめです。

2016年の電力自由化により、電力会社やプランをご自身で自由に選べるようになっています。基本料金の有無や電気代単価の違い、個性豊かなサービスなど、電力会社やプランによって契約内容は様々です。

ご自身のライフスタイルや希望に応じた電力会社やプランへ切り替えることで、節電につながると期待されます。

電力自由化の概要や電力会社の選び方については、以下の記事でも詳しく解説しています。

電力自由化とは?メリット・デメリットや電力会社の選び方を解説

石油ファンヒーターは使い方に注意しよう

寒い部屋をすばやく足元から暖める石油ファンヒーターは、冬に役立つ暖房器具です。しかし、燃料に灯油を使うため、使用時は火災や事故に気を付ける必要があります。

石油ファンヒーターを使うときには、次のような行動に注意しましょう。

  • 1時間に1~2回は換気をして、一酸化炭素中毒にならないように気をつける
  • 給油するときは、スイッチを必ず切って消火しておく
  • 点火したままの状態で、製品の場所を移動させない
  • 給油タンクのフタをしっかり閉める
  • ガソリン・軽油・混合油などと灯油を間違えて使わない

まとめ

まとめ

石油ファンヒーターは、電気代はわずかですが、灯油代にお金がかかります。そのため、トータルの暖房費は、エアコンの電気代とほぼ同じらくいだと考えられます。

すばやくパワフルに暖める特長から、暖まりはじめるまでに時間のかかるエアコンと併用するのもおすすめです。また、窓や壁を背にして置く、フィルターをこまめに掃除するなどして暖房効率を高めると、電気代を含めたランニングコストを抑えられると期待されます。

冬の暖房費が気になりったら、電力会社や電気プランの見直してみましょう。おトクなサービスのある電力会社、ライフスタイルにあったプランを選ぶだけで、ご家庭の電気代を削減できる可能性があります。

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大岩 俊之(おおいわ としゆき)

家電製品総合アドバイザー。理系出身の元営業マン。電子部品メーカー・半導体商社・パソコンメーカーなどで、自動車部品メーカーや家電メーカー向けの法人営業を経験。その後、セミナー講師として活動する傍ら、家電製品の裏事情を知る家電コンサルタントとして活動開始。TBSラヴィット!や東海地区のテレビ番組に「家電の達人」として出演した経験を持つ。現在は、家電製品アドバイザー資格試験のeラーニング講師も務める。