スポットクーラーの電気代はいくら？エアコンとの比較や節約のコツを解説

「スポットクーラー」とは、特定のスペースを冷やすための冷房機器です。「スポットエアコン」や「コンパクトクーラー」などと呼ばれる場合もあり、メーカーによって名称が異なります。また、より小型で持ち運びに特化したものを「ポータブルエアコン」と呼ぶこともあります。

スポットクーラーは、室内の空気を吸い込んで冷風と熱風を分け、吹き出し口から冷風を送り出す仕組みです。この点は一般的な壁掛けエアコンと共通していますが、構造に違いがあります。

スポットクーラーとエアコンの違い

部屋全体を涼しくするエアコンに対し、スポットクーラーは特定のスペースを冷やすためのものです。主な違いは以下のとおりです。

一般的なエアコンは、部屋の中にある「室内機」と部屋の外にある「室外機」が配管でつながっています。

一方、スポットクーラーは室内機と室外機が一体になった構造です。冷風と同時に排気口から熱風が出るため、ダクト（熱風などを外に排出するパイプ）で排熱する必要があります。ただし、コンセントに差すだけで使えるため、エアコンの室外機が置けない場合や穴あけ工事ができない場合にも使用できます。

スポットクーラー・エアコンが向いているのは、主に以下のシーンです。

スポットクーラーは、長時間稼働すると電気代が高くなりやすい家電製品の一つです。ただし、電気代は製品や使用状況などによって異なります。

スポットクーラーの電気代（目安）は、消費電力をもとに以下の計算式を使って求められます。

消費電力（kW）×使用時間（h）×電気代（円／kWh）

消費電力とは、電化製品を動かす際に使われる電力のことで、スポットクーラー本体の商品ラベルやカタログ、取扱説明書などで確認できます。また、1kWhあたりの電気代は電力会社や料金プランによって異なります。

1kWhあたりの電気代や消費電力については、以下の記事で詳しく解説しています。

1kWhあたりの電気代はいくら？電気代の内訳や節電方法を解説

消費電力の計算方法は？電気料金の求め方や節電方法も解説

スポットクーラーの1時間・1日・1カ月あたりの電気代

スポットクーラーの消費電力を600W・800W・1,000W、電気代の単価を31円／kWh（※1）と仮定し、使用時間ごとの電気代の目安を試算してみましょう。1時間、1日（5時間）、1カ月（5時間×30日間）あたりの電気代は、それぞれ以下のとおりです。

上記はあくまでも一例で、スポットクーラーの消費電力は製品によって大きく異なります。また、1日あたりの稼働時間が5時間より長くなると、それだけ電気代も高くなります。

（※1）31円/kWhは、公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会が定める目安単価です。

スポットクーラーとエアコンの電気代を比較

次に、スポットクーラーとエアコンの電気代の違いを比較しましょう。エアコンの消費電力を504W（※2）と仮定した場合、1時間・1日・1カ月あたりの電気代の目安は、それぞれ以下のとおりです。

製品によって消費電力が異なるため一概には言えませんが、先ほどのスポットクーラーの電気代と比較すると低めであることがわかります。

エアコンは、運転開始直後に最も多くの電力を消費し、設定温度に達した後はそれほど電力を消費しません。したがって、長時間稼働する場合はエアコンの方が電気代を抑えられる傾向があります。

エアコンの電気代や節約方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。

エアコンの電気代はどれくらい？つけっぱなしは節約になる？計算方法や節電方法を解説

エアコンを1カ月つけっぱなしにすると電気代はいくら？節電のコツも解説

（※2）経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ電子版」（2025年4月1日）で公表されている、冷房能力2.2kW（6畳）のエアコンの消費電力（冷房時）の平均値です。

スポットクーラーは設置や移動の手軽さが魅力の家電製品です。主なメリットを紹介します。

• 工事不要で簡単に設置できる
• 持ち運びができる
• 限られたスペースを効率良く冷却できる

工事不要で簡単に設置できる

スポットクーラーは、一般的なエアコンとは違い、設置工事が不要です。

すぐに使用でき、工事費用もかからないため、工事費が高くなる場合やエアコンを取り付けられない部屋でも使用できます。

持ち運びができる

持ち運びができる点もスポットクーラーのメリットのひとつです。

製品によってはキャスター付きのものもあり、簡単に動かせるため、使用する場所を柔軟に変えられます。また、使用しないときには収納しておくことも可能です。

限られたスペースを効率良く冷却できる

スポットクーラーは、限られたスペースをピンポイントで効率良く冷やせます。

狙った場所に冷気を届けられるため、部屋全体を冷やす必要がない場合に余計な電力の消費を抑えることができます。たとえば、料理中のキッチンやお風呂上がりの脱衣所、仕事中のデスクスペースなど、局所的・一時的に冷やしたい場合に便利です。

スポットクーラーは、必要な場所を効率的に冷やすのに適していますが、前述したように通常のエアコンと比べて電気代が高くなる傾向があります。主なデメリットとして以下が挙げられます。

• 部屋全体を冷やすのには向いていない
• 室外に熱風を排出する必要がある
• 音が大きく感じる場合がある

部屋全体を冷やすのには向いていない

スポットクーラーは、特定の場所を冷却するように設計されているため、部屋全体を冷やすのには向いていません。

使用する場所や環境によっても異なりますが、足元に冷気がたまり、上半身が涼しくないと感じることがあります。冷やす範囲を広げたい場合は、サーキュレーターや扇風機と併用して空気を循環させましょう。

サーキュレーターと扇風機については、以下の記事でも詳しく解説しています。

サーキュレーターと扇風機の違いは？エアコンとの併用で電気代がおトクになる？

室外に熱風を排出する必要がある

一般的なスポットクーラーは、吹き出し口から冷風が出る一方で、排気口から熱風が排出されます。そのため、閉め切った部屋で稼働すると、排気口から出る熱によって室温が上昇します。

室温の上昇を防ぎ、快適に過ごすためには、排気ダクトや窓パネル（排気ダクトを通すためのパネル）を使用し、室外に熱を排出しなければなりません。排気ダクトが付属していない場合は、別途購入が必要です。

また、空気を冷やす際に発生する水を自動で排出できないタイプの製品は、「ドレンタンク」がいっぱいになった際に排水が必要です。手間に感じる方は、排水が不要な「ノンドレン方式」のスポットクーラーを選びましょう。

音が大きく感じる場合がある

スポットクーラーは室内機と室外機が一体化した構造上、一般的なエアコンと比べて音が大きく感じる場合があります。就寝時などの静かな環境で使いたい場合は、スポットクーラーを選ぶ際に静音性をチェックしましょう。

なお、騒音レベルは「dB（デシベル）」という単位で表され、数値が低いほど音が小さいことを示しています。

スポットクーラーの電気代は製品によって異なりますが、使い方を工夫することで節約できる可能性があります。電気代が高いと感じている方は、以下のポイントを意識してみましょう。

• 室内に直射日光が当たらないようにする
• 無駄な運転をなるべく減らす
• サーキュレーターを併用する
• 部屋に適した冷房能力の製品を選ぶ
• 電力会社やプランを切り替える

1 室内に直射日光が当たらないようにする

室内に直射日光が当たると室温が上がり、冷却効率が下がる原因となります。レースカーテンやすだれなどを使用して日差しをカットしましょう。

また、外出の際は雨戸を閉めておくと、室内に熱が入るのを防げます。

2 無駄な運転をなるべく減らす

スポットクーラーは消費電力が高い傾向があるため、なるべく無駄な運転を減らして稼働時間を短縮しましょう。主なポイントは以下のとおりです。

• 使用しないときはこまめに電源を切る
• 風量を使い分ける
• タイマーやおやすみ運転を設定する

スポットクーラーの風量には「弱風」や「強風」などがあり、風量が強いほど消費電力が大きくなります。状況に応じて弱風に切り替えると、消費電力を抑えることが可能です。

また、製品によっては、以下のようなタイマー機能やおやすみ運転機能が搭載されている場合があります。

冷やしすぎを防ぎ、余計な電力の消費を抑えるために、こうした機能も活用しましょう。

3 サーキュレーターを併用する

スポットクーラーの冷却効果を高め、電気代を抑えるためには、サーキュレーターを併用するのが効果的です。

冷たい空気は下にたまりやすい性質があります。そのため、スポットクーラーを単体で使用すると足元に冷気がたまり、上半身が冷えにくいことがあります。

サーキュレーターは、直線的な強い風で部屋の空気を循環させる家電製品です。スポットクーラーを使用する際にサーキュレーターを併用すれば、スポットクーラーから出てくる冷気が部屋全体に行き渡り、全身が涼しく感じやすくなります。

サーキュレーターの電気代や使い方については、以下の記事でも詳しく解説しています。

サーキュレーターの電気代はどのくらい？扇風機との比較や節約ポイントを解説

サーキュレーターの使い方は？冷暖房や換気など目的別に効果的な置き場所を解説

4 部屋に適した冷房能力の製品を選ぶ

スポットクーラーの電気代を抑えるためには、使用する部屋に適した冷房能力（室温を一定の温度まで下げる力）の製品を選ぶことが重要です。

以下は冷房能力の目安の一つです。

冷やしたいスペースに対して冷房能力が足りていないと、常にフルパワーで稼働することになり、電気代が高くなる原因となります。反対に、冷房能力が必要以上に大きい製品を選ぶと、冷えすぎや余分な電力消費につながります。

5 電力会社やプランを切り替える

スポットクーラーの稼働時間を短くすれば電気代を抑えられますが、節約のために無理に使用を控えると健康に影響が生じる可能性があります。特に、スポットクーラーはエアコンが使えない環境で使用する場合が多く、長時間稼働せざるを得ないケースも少なくないでしょう。

使い方の見直しだけで十分な節約効果が得られない場合は、電力会社やプランを見直すのが効果的です。

2016年に電力自由化がスタートして以来、様々な電力会社やプランからご自身にあったものを自由に選択できるようになりました。他サービスとのセット割引や電気代の支払いでポイントがたまるサービスなど、多彩なプランが登場しているため、複数の電力会社を比較して検討しましょう。

電力自由化については、以下の記事でも詳しく解説しています。

電力自由化とは？目的やメリット・デメリット、電力会社の選び方を解説

スポットクーラーは、特定のスペースを一時的に冷やしたい場合に適した冷房機器です。工事費用がかからないため、初期費用を抑えやすい一方で、エアコンと比べて電気代が高くなりやすく、長時間の稼働にはあまり向きません。

無駄な運転を減らす、サーキュレーターと併用するなどのポイントを押さえ、電気代を節約しましょう。

ただし、エアコンが使えない場所で使用する場合など、長時間稼働せざるを得ないケースもあります。電気代を抑えたい場合は、使い方の見直しだけでなく、電力会社・プランの切り替えも検討しましょう。

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