温対法とは?事業者の義務と改正ポイントを解説
「温対法はどのような法律なのか」、「企業として何を報告・公表すべきなのか」といった疑問を抱く方も少なくありません。
地球温暖化対策を推進し、企業の脱炭素経営を強化するためには、温対法の基本的な枠組みと近年の重要な改正ポイントを把握しておくことが大切です。
本記事では、温対法の概要や企業に義務付けられた報告制度、2021年と2024年の改正ポイントについて解説します。
温対法とは
温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)とは、日本が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現に向けた中心的な役割を担う法律です。国や地方公共団体、事業者が一体となって、温室効果ガスの排出抑制と吸収を包括的に推進することを目的としています。
温対法では、エネルギー使用量などが一定規模以上の事業者に対し、自社の温室効果ガスの排出量を正確に算定し、国に報告することを義務付けています。
報告により事業者の排出実態を可視化することで、その量を認識し、自ら削減に向けた具体的な取り組みを促しているのです。
温対法の中では、この制度を、「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」と呼び、国民や事業者全般の自主的取組を促進し、その機運を高めることを目的としています。
温対法の目的
温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)の主な目的は、温暖化対策の基本理念を確立し、国、自治体、事業者、国民それぞれの責務を明確にすることです。温室効果ガスの排出抑制と吸収を促進し、対策を推進することを目指しています。
これまでに合計9回改正されており、特に2021年の改正では「2050年までの脱炭素社会の実現」が新たな基本理念として位置付けられ、脱炭素化の取り組みを促進するための指針となっています。
温対法が制定された背景
温対法は、1997年に採択された京都議定書(先進国に温室効果ガス削減目標を義務付けた国際的な枠組み)を受けて制定されました。国内で地球温暖化対策を推進するため、翌年の1998年に施行されました。
温対法は、国や地方自治体、企業、国民が協力して地球温暖化対策を進めるための法的基盤となりました。これにより、日本全体で温室効果ガス排出抑制への取り組みを組織的かつ継続的に行う体制が整えられたのです。
温対法と省エネ法の違い
温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)と省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)は、どちらも温暖化対策に貢献する法律ですが、目的や対象が異なります。
温対法と省エネ法の主な違いは、以下のとおりです。
| 温対法 | 省エネ法 | |
|---|---|---|
| 目的 | 温室効果ガスの排出抑制・吸収を促進し、脱炭素社会の実現を目指す | エネルギーの使用を合理化し、燃料資源の有効利用を図る |
| 着眼点 | 何を排出するか | 何を使うか |
| 主な対象 | 特定排出者(一定規模以上の温室効果ガスを排出する事業者) | 特定事業者(一定規模以上のエネルギーを使用する事業者) |
| 主要制度 | 温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度 | エネルギー使用量の把握と報告、中長期計画の提出、ベンチマーク制度など |
温対法は「何を排出するか」といった温室効果ガスの排出量に着目し、算定・報告を義務付けています。一方、省エネ法は「何を使うか」というエネルギーの使用量に着目し、エネルギーの効率的な利用を目的としています。
両法が連携し、国全体の環境負荷の低減と効率化を推進しています。
温対法に基づく報告義務
温対法では、国全体の地球温暖化対策を推進するため、温室効果ガスの排出量が多い事業者に対し、排出量の算定・報告を義務付けています。報告制度は、事業者の排出実態を客観的に把握し、自主的かつ継続的な排出削減を促すためのものです。
ここでは、温対法に基づく報告義務の対象となる事業者や排出量の算定・報告方法、罰則について詳しく解説します。
報告対象となる事業者
温対法に基づく報告義務の対象となるのは、「特定排出者」と定められた事業者です。特定排出者は、主に以下のいずれかに該当する事業者を指します(※1)。
- エネルギー起源CO2排出量が、原油換算で年間1,500kL以上の事業者(燃料の使用や購入した電力・熱の利用に伴う排出)
- 特定の温室効果ガス(非エネルギー起源)をCO2換算で年間3,000トン以上排出する事業者
- 貨物輸送事業や旅客輸送事業において、輸送量が一定規模以上の事業者
事業者は、自社のエネルギー使用量や排出活動を正確に把握し、特定排出者に該当するかどうかを判断して義務を履行する必要があります。
(※1)出典:環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度 制度概要」
排出量の算定方法
報告対象となる事業者は、温対法で定められた方法に基づき、温室効果ガスの排出量を算定しなければなりません。算定対象は、二酸化炭素(CO2)に加えて、メタン(CH4)や代替フロンなどの温室効果ガスです。
排出が発生した活動ごとに、政省令で定められた算定方法および排出係数に基づいて排出量を算定します。
基本的な算定式は以下のとおりです。
温室効果ガス排出量=活動量×排出係数
さらに、算定された温室効果ガスごとの排出量は、それぞれの地球温暖化係数(GWP)を用いて、共通の単位であるCO2トン(tCO₂)に換算されます。
温室効果ガス排出量(tCO₂)=温室効果ガス排出量(tガス)×地球温暖化係数(GWP)
これらの算定方法により、事業者間の排出実態を比較したり、国全体の排出量を集計したりすることが可能になります。
排出量の報告方法
特定排出者は、算定した温室効果ガス排出量を、定められた方法に従い、期限内に国へ報告する義務があります。
報告は原則として「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)」を通じてオンラインで行ないます。
算定対象期間終了後、以下の期限までに報告しなければなりません。
| 特定事業所排出者 | 毎年度7月末日まで |
| 特定輸送排出者 | 毎年度6月末日まで |
報告された情報は国によって集計され、公表されます。報告義務によって企業の排出削減努力が広く社会に開示され、ESG投資などの判断材料としても活用されます。
罰則
温対法に基づく報告義務は地球温暖化対策の根幹であるため、違反した場合には罰則が科されることがあります。
具体的には、特定排出者が排出量の算定・報告を怠った場合、あるいは意図的に虚偽の報告を行った場合には、20万円以下の過料が科されることがあるので注意が必要です。
温対法の2021年の改正ポイント
2021年には、日本が目指す「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、温対法の基本理念と制度の基盤を整備するための大規模な改正が行われました。
以下で、温対法の2021年の以下の3つの改正ポイントを解説します。
- カーボンニュートラル宣言を踏まえた基本理念の新設
- 自治体の役割強化
- 脱炭素経営に向けた企業の排出情報公表の強化
カーボンニュートラル宣言を踏まえた基本理念の新設
本改正では「2050年までの脱炭素社会の実現」が温対法の基本理念として明確に位置づけられました。この基本理念の新設により、国の地球温暖化対策に継続性が確保され、国民・自治体・事業者が脱炭素への取り組みや投資を積極的に進めやすい基盤が整備されました。
また、関係者を規定する条文においては「国民」が最初に記載され、脱炭素化には国民全体の理解と協力が不可欠であるという前提が明確化されました。
自治体の役割強化
地方創生にもつながる再生可能エネルギーの導入などを加速するために、市町村の役割が強化されました。具体的には、市町村が、地域脱炭素化促進事業制度に基づき、環境配慮や地域貢献など地域の方針に適合する脱炭素事業を認定できる制度が導入されました。
認定を受けた事業には、関係する行政手続きのワンストップ化などの特例が適用されます。地域課題の解決に資する再エネ事業について、市町村が積極的に関与し、地域内での円滑な合意形成を図りやすくする基盤が整えられました。
脱炭素経営に向けた企業の排出情報公表の強化
企業の温室効果ガス排出量報告についてデジタル化が進められ、報告側とデータ利用側の双方の利便性が向上しました。
これまでは情報開示請求が必要でしたが、制度変更により請求は不要となり、公表までの期間も「2年」から「1年未満」へと短縮されました。
企業の排出量情報が、より広範かつ迅速に活用されやすくなりました。これにより、企業の脱炭素経営を支える基盤が強化され、ESG投資の判断材料としての活用も促進されています。
温対法の2024年の改正ポイント
2024年3月に閣議決定された改正は、2025年4月1日から施行されています。以下で、温対法の3つの改正ポイントを解説します。
- 国際協力(JCM)の実施体制の強化
- 地域脱炭素化促進事業制度の拡充
- 国民のライフスタイル転換の促進
国際協力(JCM)の実施体制の強化
日本のCO2削減目標達成を海外の協力で加速させる仕組みである二国間クレジット制度(JCM)の実施体制が強化されました。JCMとは、日本企業が途上国に優れた脱炭素技術を導入し、その結果削減できたCO2の一部を日本の削減実績として算入する国際協力の仕組みです。
本改正では、増加する海外プロジェクトの調整や削減量の管理を円滑に行うため、関連業務を一本化し、専門の「指定法人」に権限を委ねます。これにより、制度の効率的な運用を図ることを目指しています。
地域脱炭素化促進事業制度の拡充
地域の環境保全や雇用に貢献する「地域共生型再生可能エネルギー」の導入を加速させるために、制度が拡充されました。
具体的には、市町村が単独で定めていた再生可能エネルギーの導入に適した場所である「促進区域」を、都道府県と市町村が共同して定めることも可能になりました。
なお、都道府県と市町村が共同で定めた「促進区域」が複数市町村にまたがる場合には、地域脱炭素化促進事業計画の認定を都道府県が行うこととなります。
国民のライフスタイル転換の促進
日常生活で排出されるCO2を削減するため、消費者の行動変容を促す規定が整備されました。
具体的には、製品やサービスのライフサイクル全体(原材料調達、製造、利用、廃棄)を通して、CO2排出量の少ない選択肢を国民が意識しやすくなるような仕組みの整備が推進されます。
企業だけでなく、国民一人ひとりが「脱炭素に貢献するライフスタイル」へと移行することで、社会全体での排出削減が一層促進されることが期待されています。
まとめ
温対法は、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた重要な基盤となる法律です。温対法では、特定排出者に対し、温室効果ガス排出量の算定、報告、および公表を義務付けています。
2021年の改正では、脱炭素社会の実現に向けた理念が確立されました。さらに、2025年施行の改正では、国際協力(JCM)の強化や地域連携の拡充など、脱炭素化の実務を加速させる措置が講じられています。
企業は法改正への対応を図り、脱炭素化の取り組みを積極的に推進していく必要があります。また、日常生活における節電も、CO2排出量の削減に寄与する重要な行動です。
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