オフグリッドとは電力を自給自足している状態のこと

オフグリッドとは、電力会社が運用している送電網(グリッド)から独立(オフ)し、電力を自給自足する状態を指します。電力会社に依存せず、使用する電力を自ら確保します。

オフグリッドの実現には、太陽光発電や風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギーが用いられます。企業や施設がオフグリッドを導入し大規模に実施する場合もありますが、家庭でも実践することが可能です。

電力を自給自足するために必要な自家発電について詳しくは、以下の記事で紹介しています。

家庭でできる自家発電方法は?種類ごとの特徴やメリット・デメリットを解説

家庭で実現できるオフグリッドのパターン

オフグリッドは、企業がビルや商業施設で導入するだけでなく、家庭でも実現できます。電力を完全に自給自足する方法以外にも、様々な形でオフグリッドを取り入れることが可能です。

以下では、家庭で実現できるオフグリッドの3つのパターンについて解説します。

①太陽光発電と蓄電池による完全なオフグリッド

1つ目のパターンは、電力会社から一切電気を購入しない完全なオフグリッドです。

太陽光発電で電気を発電し、蓄電池に蓄えておくことで、自宅で使用する電力を再生可能エネルギーで賄います。完全なオフグリッドの住宅も実際に存在するため、家庭でも実現は可能です。

ただし、太陽光発電で安定した発電量を確保し続け、完全な自給自足を実現することは容易ではありません。誰にでも完全なオフグリッドができるわけではない点には留意が必要です。

完全なオフグリッドを実現するために電力会社との契約を解除し、送電網を物理的に切り離すと、将来的に再接続を希望した際に多額の工事費用が発生する可能性があります。また、手続きに時間がかかる点にも注意が必要です。

さらに、電力会社からの供給がないため、蓄電池の故障や記録的な長雨などの際にはバックアップが確保できないリスクもあります。自宅に導入する太陽光発電設備には、適切な施工と維持管理が求められる点にも留意が必要です。

太陽光発電や蓄電池について詳しくは、以下の記事で紹介しています。

太陽光発電のメリットとデメリットは?設置の判断材料をわかりやすく解説

蓄電池とは?仕組みや種類、メリット、デメリットなどの基礎知識を解説

②自家発電・自家消費しながら電力会社の電気も活用

完全なオフグリッドが難しい場合でも、自家発電と電力会社の電気を併用する方法があります。

可能な限り太陽光発電で発電し、蓄電池に蓄えた電気を基本的に使用して生活します。梅雨や雪などの影響で安定した発電が難しい日が続くときに、電力会社の電気を活用すれば、不自由なく日常生活を送れるでしょう。

基本は自家発電・自家消費を行い、不足分のみ電気を購入する形となります。そのため、完全なオフグリッドでなくても電気料金を抑えられます。

③特定の電化製品のみオフグリッド

太陽光発電設備や蓄電池の導入が難しい場合は、特定の電化製品のみをオフグリッドで運用する方法があります。

持ち運べるサイズの太陽光発電パネルやポータブル蓄電池を活用すれば、自家発電した電気を自家消費できます。家全体をオフグリッドにできるほどの発電量は確保できませんが、一部の家電に必要な電力は賄えるでしょう。

スマートフォンや照明器具など消費電力が小さい電化製品に限定すれば、小規模からオフグリッドを実践できます。大幅な節電効果は期待できないものの、電気料金の負担を少しずつ抑えられます。

オフグリッドのメリット

オフグリッドのメリット

エアコンの除湿方式には、再熱除湿のほかに「弱冷房除湿」があります。

オフグリッドには、以下のように様々なメリットがあります。家庭でオフグリッドの導入を検討している場合は、メリットを理解しておくことが重要です。

  • 電気料金を抑えられる
  • 災害時の停電リスクに備えられる
  • 再エネなどを活用することでCO2削減に貢献できる

電気料金を抑えられる

オフグリッドのメリットとしてまず挙げられるのが、電気料金を抑えられる点です。

電気を完全に自給自足するオフグリッドでは、電力会社との契約が不要なため、電気料金の支出が発生しません。また、部分的にオフグリッドを導入する場合でも、電力会社から購入する電力量を抑えられるため、電気料金の節約につながります。

電気料金の高騰により家計の負担が大きい場合、オフグリッドは有力な選択肢となります。

災害時の停電リスクに備えられる

オフグリッドの実現により、災害時の停電リスクに備えられる点は大きなメリットです。

日本は地震や台風などの自然災害が多く、それに伴って停電が発生するリスクがあります。電力会社と契約していても、停電時には復旧まで電気が使えず、不便が生じます。

完全なオフグリッドを実現していれば、電力会社からの供給に依存する必要はありません。オフグリッド設備が稼働していれば、災害時でも電気を確保できます。また、部分的にオフグリッドを実践する場合でも、蓄電池に貯めておいた電気を活用して電力を確保できます。

CO2削減に貢献できる

オフグリッドの実現により、CO2削減に貢献できる点もメリットです。

オフグリッドでは太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーを活用し、温室効果ガスを排出せずに発電した電力を自家消費できるため、環境負荷を抑えられます。

環境省が実施した「令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査」によると、世帯当たりの年間CO2排出量は2.47t-CO2で、そのうち67.6%が電気によるものとされています(※1)。

家庭の電気使用によるCO2排出抑制のために、オフグリッドを実践することが期待できます。

(※1)出典:環境省「令和5年度 家庭部門の CO2排出実態統計調査結果について(確報値)」

オフグリッドのデメリット・注意点

オフグリッドには様々なメリットがある一方で、デメリットや留意すべき点もあります。安易に実践して後悔しないためにも、デメリットや注意点をよく確認しましょう。

  • 初期費用がかかる
  • 発電量が安定しづらい
  • 設備の定期的なメンテナンスが必要

初期費用がかかる

オフグリッドのデメリットとして、初期費用が発生する点が挙げられます。

家庭でオフグリッドを実現するためには、太陽光発電設備と蓄電池が必要です。いずれも導入時にまとまった費用がかかるため、金銭的に余裕がない場合はオフグリッドの導入が難しくなります。

ただし、太陽光発電設備や蓄電池の導入費用は、世界的に低下しています。まとまった初期費用は必要ですが、コストの低下により以前より導入のハードルは下がっています。

また、太陽光発電設備や蓄電池の導入時には補助金を利用できる場合があるため、居住している自治体の情報を確認しましょう。

太陽光発電の設置費用について詳しくは、以下の記事で紹介しています。

太陽光発電の設置費用は?相場や内訳、費用対効果を解説

発電量が安定しづらい

オフグリッドは太陽光発電などを活用するため、発電量が安定しにくく、完全な自給自足が難しいというデメリットがあります。

太陽光発電の発電量は、天気や日照時間に大きく左右されます。梅雨時に日照時間が短くなる場合や、積雪によって発電できない期間がある場合などは、電気の自給自足が難しくなります。

発電量を安定させる仕組みを整備できない場合は、自家発電・自家消費を行いながら電力会社と契約し、不足分を購入する方法が現実的です。

設備の定期的なメンテナンスが必要

オフグリッドに必須の太陽光発電設備や蓄電池は、定期的なメンテナンスが必要です。

定期的に点検やメンテナンスを行って機能を維持しなければ、発電効率の低下につながります。専門業者に点検を任せると、定期的にメンテナンス費用が発生します。

設備は導入して終わりではなく、定期的にまとまった出費が発生します。これらを理解したうえでオフグリッドを実践することが重要です。

オフグリッドの考えを取り入れながら節電する方法

オフグリッドはうまく取り入れれば電気料金の節約につながりますが、実現が難しいケースも多く、誰にでもあう方法とはいえません。しかし、完全なオフグリッドの実現が難しくても、その考え方を取り入れることで節電につなげることは可能です。

以下では、効果的な節電方法を解説するため、できることから実践してみてください。

自家発電や自家消費を増やす

完全なオフグリッドが難しい場合でも、自家発電や自家消費を増やすことで節電につながります。

電力会社から購入する電気の量を削減できれば、支払う電気料金を抑えられます。電気料金の高騰が続く昨今では、電力会社に依存せず、自力で電気を確保できる仕組みを整えておくことが重要です。

電気料金の削減に加え、災害時への備えも重視する場合は、太陽光発電や蓄電池の導入を検討し、部分的なオフグリッドの実践を目指しましょう。

電気の使い方を見直す

使用電力の大半を自家発電で賄い、電気料金の負担を軽減するためには、電気の使い方を見直す必要があります。

完全なオフグリッドは難しくても、部分的には可能だという家庭は多いと考えられます。電気の使い方を見直して節電し、使用電力をできるだけ自給自足できるようにすれば、電気料金の支出を抑えられます。

日ごろから省エネを意識して過ごせば、無理なく電気の自給自足に近づけるでしょう。不要な照明は消す、使っていない家電のコンセントを抜く、エアコンの設定温度を見直すなど、小さな工夫で省エネを実現でき、電気料金を抑えられます。

節電するための電気の使い方について詳しくは、以下の記事で紹介しています。

電気つけっぱなしの電気代は高くなる?防ぐ機能や節約のポイントも解説

家電のプラグはコンセントから抜いた方がいい?待機電力削減による節電効果を解説

電力会社やプランを切り替える

電気料金を節約したいなら、電力会社や電気料金プランの見直しが有効です。

電力の小売自由化により、消費者は電力会社やプランを自由に選んで契約できるようになりました。現在の契約内容を見直し、自分にあった電力会社やプランに切り替えれば、エネルギーの自給自足が難しい場合でも電気料金を抑えられる可能性があります。

たとえば、基本料金0円で使った電力量分のみを支払うプランの場合、電気使用量を削減することで節約効果が期待できます。その結果、実質的にオフグリッドに近いメリットを得られる場合があります。電気料金をできるだけ抑えたい方は、検討してみてください。

電力自由化や電力会社の乗り換え方法について詳しくは、以下の記事で紹介しています。

電力自由化とは?目的やメリット・デメリット、電力会社の選び方を解説

電力会社や電気プランは乗り換えできる?電気料金は変わる?選び方や注意点を解説

まとめ

オフグリッドとは、電力会社からの供給に頼らず、自家発電・自家消費によって電気を自給自足することを指します。電気料金を抑えられ、災害時の停電に備えられるメリットがある一方で、初期費用やメンテナンス費用がかかるほか、発電量の安定化が難しいという課題もあります。

完全なオフグリッドが難しい場合でも、太陽光発電や蓄電池の導入によって自家発電量を増やし、電気の使い方を見直すことで電気料金を抑えることは可能です。オフグリッドの実現が難しい場合は、電力会社や電気料金プランの見直しによって電気料金を抑えられるため、検討すると良いでしょう。

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近藤 元博(こんどう もとひろ)

愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」「市村地球環境産業賞」他 資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。
その後、経営企画、事業企画等に従事し、技術経営、サプライチェーンマネージメント及び事業継続マネジメント等を推進。
2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて環境経営支援、資源エネルギー技術開発等など社会実証に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 内閣府国土強靭化推進会議 委員他