ガスエアコン(GHP)とは?仕組みをわかりやすく解説

ガスエアコンの方式や仕組みは、用途や規模によって大きく異なります。

ここではガスエアコンの基本構造を3つの観点から解説します。

ガスエアコンには主に2つの方式がある

ガス空調は建物の規模や使用用途によって2つの方式に分かれます。一つは個別空調方式のGHP、もう一つはセントラル方式の吸収冷温水機です。

事務所や会議室など、フロアごとに空調を使い分けたい建物にはGHPが向いています。

ホールなど大空間全体の冷暖房を一括で行いたい場合は、吸収冷温水機が選ばれることが多くなっています。

本記事では、一般的に「ガスエアコン」として比較対象に挙がるGHPを中心に解説します。

ガスエンジンで動くヒートポンプシステム

GHPは、冷媒を循環させるヒートポンプサイクルで冷暖房を行う空調システムです。

冷房時は屋内の熱を屋外に放出し、暖房時は外気の熱を屋内に取り込む仕組みです。

このサイクルの中心となる圧縮機(コンプレッサー)を、ガスエンジンで駆動するのがGHPの大きな特徴です。

暖房時はガスエンジンの廃熱も冷媒の加熱に活用できるため、暖房の立ち上がりが早く、外気温が低下した際の安定性も期待できます。

EHP(電気式エアコン)との根本的な違い

GHPとEHP(電気式エアコン)の冷凍サイクルは同等ですが、両者の最大の違いは「圧縮機(コンプレッサー)を動かす動力源」にあります。

GHPはガスエンジンを使用し、EHPは電気モーターを使用する仕組みです。

GHPは消費電力を大幅に抑えやすいため、電力ピークのカットや電気の基本料金の削減効果が期待できます。

ランニングコストの内訳も異なり、EHPは基本的に電気料金のみで比較的シンプルです。

一方、GHPはガス料金と少量の電気料金で構成され、設備条件やメンテナンス負担の確認も必要となります。

さらに、GHPはガスエンジンを搭載しているため、定期点検も欠かせません。ほとんどの機種では、5年または1万時間ごとの点検が目安とされています。

ガスエアコンが向いている建物・向いていない建物

フロアごとや部屋ごとに個別制御したい建物では、ガスエアコンが適しています。オフィスや学校、公共施設など、停電対策やピーク電力の抑制を重視する施設でも導入メリットが期待できます。

一方で、現在は家庭用ガスエアコンの供給はほとんどありません。

1970年代ごろには大手都市ガス会社の関係会社などが家庭用機種を販売していました。しかし現在は販売中止となっており、部品供給も終了しているため、修理も困難な状況です。そのため、家庭用エアコンの主流は現在も電気式となっています。

ガスエアコンの3つのメリット

ガスエアコンの3つのメリット

ここからは、GHPが選ばれる主な理由となる3つのメリットを順に解説します。

消費電力を抑え、電力基本料金の低減にもつながる

GHPはEHPと比べて消費電力が大幅に少なく済み、空調に使う電力を抑えやすいのが特徴です。

電力需要のピークを抑えやすいため、最大需要電力で決まる業務用電気料金の基本料金の低減も期待できます。

特に夏場の日中など、空調負荷が集中する時間帯ではピークカットの効果を見込みやすいでしょう。

GHPの電力使用量はEHPの約10分の1とされており、発電機能付きの機種では、約100分の1まで下がる例もあります。

暖房の立ち上がりが速く、寒冷地でも安定した性能を発揮する

GHPはガスエンジンの廃熱を暖房に活用できるため、暖房の立ち上がりが早い点が大きな特徴です。電源を入れてから短時間で室温を上げやすく、間欠運転を行う施設にも適しています。

外気温が低下しても暖房能力がほとんど落ちないのも強みです。そのため、寒冷地や冬季の業務用空調にも適しているといえます。

朝一番の始業前に素早く室温を上げたい学校や事務所など、短時間で暖房を効かせたい施設に向いています。

停電対応型なら非常時の空調・電力確保に役立つ

停電対応型GHPは、停電時でも自立運転によって空調を継続できる機種です。

バッテリーと発電機を搭載しており、停電直後にエンジンを起動して発電を始めます。発電した電力は空調だけでなく、照明や通信機器などへの給電にも使えるのが特徴です。

停電対応型GHPは避難所をはじめ、停電時の業務継続が必要な場所でも採用されています。災害時の避難所や医療施設など、非常時に空調と電力の継続を重視する施設では導入メリットが大きいでしょう。

ガスエアコンのデメリットと注意点

ガスエアコンのデメリットと注意点

続いて、導入を検討する際に押さえておきたい3つのデメリットを整理します。

電気式エアコンより初期費用が高い

GHPは業務用機器のため、電気式エアコンと比べて本体価格が高くなる傾向があります。

本体価格は数百万円以上と非常に高額で、別途ガス配管工事も必要なため、設置環境によってはさらに費用がかさむ点にも注意が必要です。

設備投資の回収期間はランニングコスト削減額によって変わるため、導入前に年間削減額のシミュレーションを行うことが重要です。

定期的な整備と点検が必要

GHPはガスエンジンを搭載しているため、5年または1万時間ごとの定期点検が必要です。点検費用は年間数万円程度かかるケースが多く、電気式エアコンよりメンテナンスコストが高くなる傾向があります。

点検を怠ると、性能低下やランニングコストの増加、環境性能の悪化を招く可能性があるため、信頼できる業者と保守契約を結んでおくことが推奨されます。

設置スペースや周辺環境への配慮が必要

GHPは空調エリアごとに室外機を設置する方式のため、十分な設置スペースが必要です。定期点検やメンテナンスを行うためのスペースも、事前に確保しておく必要があります。

室外機は騒音を抑える設計がされていますが、実際の運転音は設置場所や周囲の環境による影響も受けやすい点に注意が必要です。

住宅や保育園に近い場所へ設置する場合は、近隣への配慮や防音対策も検討しておくことが重要です。

まとめ

ガスエアコン(GHP)は、ガスエンジンで圧縮機(コンプレッサー)を動かす業務用空調システムです。EHPに比べて消費電力を抑えやすく、暖房の立ち上がりが早い点が大きな特徴といえます。また、停電対応型であれば、非常時にも空調や電力を確保できる点がメリットです。

一方で、初期費用や保守負担、設置条件は電気式エアコンと異なるため、導入時は用途に応じて比較検討することが重要です。

家庭では電気式エアコンが主流のため、自宅の光熱費が気になる場合は電力会社や料金プランの見直しも有効です。

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大岩 俊之(おおいわ としゆき)

家電製品総合アドバイザー。スマートマスター。理系出身の元営業マン。電子部品メーカー・半導体商社・パソコンメーカーなどで、自動車部品メーカーや家電メーカー向けの法人営業を経験。その後、セミナー講師として活動する傍ら、家電製品の裏事情を知る家電コンサルタントとして活動開始。TBSラヴィット!や東海地区のテレビ番組に「家電の達人」として出演した経験を持つ。現在は、家電製品アドバイザー資格試験のeラーニング講師も務める。