エアコンの暖房にかかる電気代

室内の温度や湿度をコントロールできるエアコンは、冷房器具としてはもちろん、寒い季節の暖房器具として欠かせない存在です。

快適な生活を送るのに役立つ一方、電気代が高いイメージもあるため、使いすぎると電気代に響くのではないかと不安に思う方もいるようです。しかし、実際のところ、エアコンの暖房にはどれくらいの電気代がかかるのでしょうか。

まずは、エアコンの暖房にかかる電気代を正しく理解しておきましょう。

1時間あたりの電気代は約3~46円

エアコンの暖房にかかる電気代は、外気温と設定温度との差、利用する部屋の環境、また契約する電気プランなどにより異なります。しかし、製品ごとの消費電力の違いから、目安となる電気代を計算することは可能です。

  • 1時間あたりの電気代(円)=消費電力(kW)×電気代単価(31円/kWh)

エアコンの消費電力(暖房の定格消費電力)は、メーカーの製品カタログや取扱説明書、公式サイトで調べられます。また、電気代単価「 31円/kWh(税込)」は、全国家庭電気製品公正取引協議会が発表した電気代の目安単価で、主要電力会社10社の平均単価です。

エアコンを標準的なパワーで使ったときの消費電力を「標準(定格)消費電力」と呼び、標準(定格)消費電力(※1)が500Wのエアコンの電気代の場合、1時間あたりの電気代は次のように計算します。

  • 1時間あたりの電気代(円)=500(W)÷1,000×31(円/kWh)=15.5円

ただし、エアコンの消費電力は出力するパワーによって変動し、1時間あたりで最小100Wから最大1,500Wほどの差が出ます。そのため、実際にかかる電気代にも、1時間あたり約3~46円ほどの違いが生じます。

(※1)消費電力がワット(W)で表示されている場合、1,000で割ってキロワット(kW)に単位をそろえます。

エアコンの電気代は部屋の広さでも変わる

同じメーカー・同じシリーズのエアコンでも、一般的に、部屋の広さ(畳数)に応じた性能差があります。

部屋の広さ(畳数)の違いによるエアコンの性能差

部屋の広さ(畳数) 標準(定格)消費電力 電気代の目安(※2)
6畳(9~11㎡) 440W 13.64円
8 畳(10~13㎡) 510W 15.81円
10畳(13~16㎡) 660W 20.46円
12畳(15~19㎡) 810W 25.11円
14畳(18~23㎡) 1,060W 32.86円
18畳(24~30㎡) 1,430W 44.33円
20畳(26~32㎡) 1,550W 48.05円
23畳(31~39㎡) 2,020W 62.62円
26畳(35~43㎡) 2,450W 75.95円
29畳(39~48㎡) 2,960W 91.76円

(※2)「電気代の目安」は電気代単価を 31円/kWh(税込)として計算しています。

室温をコントロールしようと思ったら、部屋が広くなるほどエアコンにパワーが必要です。快適な温度や湿度をできるだけ効率良く実現するには、使う部屋の広さにあわせた性能のエアコンを選ぶほうが良いでしょう。

エアコンの暖房性能に影響する部屋の条件

使う部屋の環境によってエアコンに求められる暖房性能が変わり、電気代にも影響する場合があります。

先述のとおり、エアコンは部屋が広くなるほど高い暖房性能が必要です。しかし、電気代が気になるからと部屋の広さにあわせず、暖房性能の低いエアコンを選ぶと、パワー不足から常にフル稼働の状態となり、かえって電気代が上がる可能性があります。

たとえば、実際の部屋より広い部屋に対応するエアコンを選んだほうが設定温度に達するまでがスムーズで、節電につながるでしょう。

また、鉄筋マンションと木造の戸建住宅を比べると、遮熱性や断熱性の違いから、木造の戸建住宅のほうがエアコンに求められる暖房性能が高く、電気代は上がる傾向があります。

ほかにも、次のような部屋で使う場合、より高い暖房性能が必要となり、電気代がかかりやすいと考えられます。

  • キッチンとリビングが続いている部屋(ふた間続き)
  • 吹き抜けの部屋
  • ガラス戸や窓の大きい部屋
  • 日当たりの悪い部屋

エアコンとほかの暖房器具の電気代はどう違う?

冬の暖房器具はエアコン以外にも様々な種類があります。エアコンの暖房にかかる電気代が高いのか安いのかを知るために、エアコン以外の暖房器具5種を比較しながら電気代目安を紹介します。

1時間あたりの消費電力と電気代目安

暖房器具 消費電力 電気代目安
エアコン 約440~2,960W 約13~92円
オイルヒーター 約600~1,500W 約19~46円
パネルヒーター 約300~1,200W 約9~37円
セラミックファンヒーター 約450~1,300W 約14~40円
ホットカーペット 約100~500W 約3~16円
こたつ 約80~600W 約2~19円

上表は1時間あたりの目安で比較していますが、部屋を暖めるまでにかかる時間やほかの暖房器具と併用するなど、実際の使用方法によって電気代は変わります。

オイルヒーター

オイルヒーター

オイルヒーターは、器具の内側にあるオイルを電気で暖めて、発生した暖気で部屋全体を暖めるものです。オイルの力を使いますが、燃料として用いられないため安全性が高く、風が起きないため部屋の乾燥も防げます。

エアコンと同じく、オイルヒーターは室内全体を暖めるのに便利です。しかし、オイルが温まるまでに時間がかかる分、部屋が暖まるまでにエアコンよりも時間がかかります。

オイルヒーターの一般的な消費電力は1時間あたり600~1,500Wほどで、電気代は1時間あたり約19~46円です。

パネルヒーター

パネルヒーター

パネルヒーターはパネル内部のヒーターを利用した輻射熱によって、部屋の空気を暖める機器です。オイルヒーターと同じような仕組みですが、オイルを蓄える必要がないため、スリムで軽量なデザインとなっています。

空気を汚さず、火事の心配が少ない暖房器具ですが、部屋全体を暖めるのはやや時間がかかります。

消費電力は1時間あたり約300~1,200Wで、電気代に換算すると約9~37円です。エアコンやオイルヒーターよりも電気代はやや抑えられる印象ですが、高出力で何時間も使うと電気代が高くなる可能性もあります。

セラミックファンヒーター

セラミックファンヒーター

セラミックファンヒーターは、セラミックで覆われた電熱線から、暖めた空気を送り出す電気ヒーターです。

コンパクトで置き場所を選ばないものが多いため、狭い場所でもピンポイントで使えます。また、加湿機能や人感センサーなど、多彩な機能も魅力です。

一般的な消費電力は1時間あたり450~1,300Wほどで、電気代は1時間あたり約14~40円と、コンパクトなサイズながら暖房器具のなかでは電気代がかかりやすいため、短時間の使用に向いています。

ホットカーペット

ホットカーペット

ホットカーペットは、内側に電熱線を張りめぐらせたカーペットを発熱させて、足元を暖める暖房器具です。室温を変える器具ではありませんが、足元が暖まることでほかの暖房器具のパワーを抑えられ、結果として電気代を下げる効果が期待されます。

消費電力は1時間あたり約100~500W、電気代に換算すると約3~16円となっており、暖房器具の中では電気代は控えめです。

発熱させる場所を選択できる製品もあり、使い方によっては電気代を大きく節約できる可能性もあるでしょう。

こたつ

こたつ

こたつは、天板の裏側に電気ヒーターを取り付けたテーブル一体型の暖房器具です。こたつ布団をかけて、暖めた空気を逃さないようにして使います。

様々な大きさやデザインがそろっており、好みにあわせて選べます。また最近は、イスに座って使えるダイニングタイプも増えています。

一般的な消費電力は1時間あたり80~600W、電気代は2~19円ほどと、 暖房器具のなかではホットカーペットと並んで電気代が低めです。腰から下を暖めるため、ほかの暖房器具との併用に適しています。

エアコンと石油ファンヒーター、暖房費はどちらがおトク?

エアコンのように部屋全体を暖める器具には、電気ではなく灯油を燃料とする石油ファンヒーターもあります。石油ファンヒーターは、灯油を燃やして発生した暖気をファンで送風し、室内をスピーディに暖めます。

室内をパワフルに暖めてくれる石油ファンヒーターですが、電気代しかかからないエアコンに対し、ファンを回すための電気代に加えて灯油代がかかります。

そこで、エアコンと石油ファンヒーターにかかる電気代を、灯油代を含めた1時間あたりのコストで比較してみましょう。石油ファンヒーターの灯油代は次の計算式(※3)(※4)から求められます。

  • 灯油代(円)=燃料消費量(L/h)×使用時間(h)×1リットルあたりの灯油代(円/L)

上記を踏まえ、エアコンと石油ファンヒーターにかかるコストを比較したのが下表です。

エアコンと石油ファンヒーターの1時間当たりのコスト

エアコン 石油ファンヒーター
電気代(※5) 15.81円 0.26~0.43円
灯油代 5.5~20.9円
コストの合計 15.81円 5.76~21.33円

エアコンの電気代は、「性能差」として先に表で紹介した「標準(定格)消費電力510W(8畳向け)」の数値を使用しています。また、石油ファンヒーターの消費電力は、コロナ「FH-CP25Y(G)」の消費電力(燃焼時)8.5~14Wから求めています。

電気代だけを比べると、エアコンのコストが気になるかもしれません。しかし、灯油代を含めて考えると、使い方によってはエアコンのほうが石油ファンヒーターよりコスパが良くなる可能性もあり、コスト差はほとんどないとわかります。

コストばかりを気にせず、給油の負担なく使えるエアコン、即暖性を求めるなら石油ファンヒーターのように、それぞれのメリットから使う暖房器具を選ぶのがおすすめです。

エアコンの電気代については、以下の記事でも詳しく解説しています。

エアコンの電気代はどれくらい?つけっぱなしは節約になる?計算方法や節電方法を解説

(※3)燃料消費量は、コロナ「FH-CP25Y(G)」の数値0.064~0.243L/hを使用しています。
(※4)灯油代は、経済産業省資源エネルギー庁の「金額換算係数」の数値86円/ L(税込)を使用しています。
(※5)電気代は、全国家庭電気製品公正取引協議会が発表した電気代の目安単価 31円/kWh(税込)を使用しています。

暖房にかかる電気代を節約するには

エアコンに限らず、暖房にかかる電気代を少しでも抑えるには、使い方や使う環境などでの工夫が重要です。

そこで、暖房器具の電気代節約につながる具体的なアイデアを紹介します。

1 部屋の気密性を高める

暖房器具を使っていても、部屋の外から冷気が入り込む環境だと、いつまでたっても部屋や体は暖まりません。暖房器具の設定温度や出力を上げたり、長時間使い続けたりすると満足感は得られるかもしれませんが、電気代が高くなるおそれもあります。

暖房効率を上げて電気代を抑えるには、部屋の気密性を高めることが大切です。たとえば、ドアや窓の開閉を控える、厚手のカーテンで外からの冷気を遮る、断熱シートを活用するなどで、冷気の出入りを防ぐ環境を整えられます。

ただし、石油ファンヒーターを使うときは、灯油の不完全燃焼によるトラブルを防ぐために、定期的な換気を忘れないようにしましょう。

2 暖房のサポートアイテムを併用する

暖房器具を使うときは、室内や体をいち早く暖められるサポートアイテムを活用しましょう。

  • サーキュレーター
    エアコンやオイルヒーターで部屋全体を暖めたいなら、サーキュレーターで部屋の空気を循環させる
  • 断熱マット
    ホットカーペットやこたつを使うなら、床との間に断熱マットを敷いて、熱が逃げにくく低温でも暖まりやすい環境を整える
  • 上着の追加
    ホットカーペットやこたつは腰から上が暖まりにくいため、カーディガンなどの上着を1枚多めに着込む

また、エアコンとこたつ、ホットカーペットとオイルヒーターなど、複数の暖房器具を併用してそれぞれのメリットをかけあわせると、電気代を節約するのに役立ちます。

3 設定温度を控えめにする

暖房器具の設定温度が外気と大きく違うと、電気代に影響します。設定温度はできるだけ控えめを心がけましょう。暖房器具の併用で暖房効率を上げるなら、それぞれの設定温度を低くすれば電気代を節約できます。

国の推奨する省エネ温度は20℃です。たとえば、エアコンは設定温度を21℃から20℃へ1℃低くすると、1年で約10%の節電効果が期待されます。

また、冬の気候は乾燥しやすいうえ、暖房器具の利用で室内の乾燥が進む場合もあります。乾燥による体感温度の低下を防ぐために、適度な加湿を心がけましょう。

エアコンの設定温度については、以下の記事で詳しく解説しています。

エアコンの暖房は何度に設定すれば良い?推奨温度や節電方法を解説

4 フィルターなどを定期的に掃除する

エアコンやセラミックファンヒーターなどフィルターの付属する暖房器具は、定期的なフィルター掃除が大切です。

フィルターが目詰まりすると暖房性能が下がり、電気代の上昇につながります。1年間掃除をしなかったエアコンは、掃除をしたエアコンに比べて、暖房時に約25%のムダな電気代がかかるとのデータもあります。

掃除機能が付いているエアコンもありますが、機能だけに頼らず自分でもこまめに掃除することが大切です。

掃除の目安は2週間に1度です。ゴミやホコリなどを取り除くだけで、約5~10%の省エネ効果を得られます。

5 目的にあわせて暖房器具を選ぶ

暖房器具ごとに仕組みや消費電力などの特徴は異なります。それぞれの性能を最大限に発揮できる環境で使うと、電気代もかかりにくいでしょう。

  • エアコンやオイルヒーターは部屋全体など広範囲を暖める目的で使う
  • 足元の冷えに強いホットカーペットは、ほかの暖房器具と併用する
  • テーブルを買い替える予定なら、コストを抑えて腰から下を暖めるこたつを選ぶ
  • 電気代が高めのセラミックファンヒーターは、浴室やトイレなど必要な場所に必要なときだけ、ピンポイントに活用する

6 最新のエコ家電に買い替える

最新のエコ家電に買い替える

エアコンなどの暖房器具をはじめとする家電製品は、10年も経つと製品の性能が進み、消費電力が大きく変わります。環境省によると、最新のエアコンは10年前と比べて約15%の電気代を削減できるとされます。

特に電気代に占める割合の高いエアコンは、省エネ性能の高い最新のものに買い替えるだけでも、電気代の節約になる可能性が高いでしょう。

まずは現在お持ちの暖房器具の製造年度を確認して、10年を節目に買い替えを検討するのがおすすめです。

暖房費の節約には電力会社やプランの見直しもおすすめ

使い方や使う環境などを工夫すれば、暖房器具の電気代を節約できます。しかし、電気代に直結する電力会社やプランを見直すと、さらに効率良く電気代を下げられる可能性があります。

2016年の電力自由化により、様々な電力会社やプランを個人が自由に選べるようになりました。暖房にかかるコストが気になりはじめたら、ライフスタイルにあわせておトクに電気を使える会社やプランを探してみてください。

電力会社の切り替えは、新しい電力会社への申し込みと同時に完了するのが一般的です。スマートメーターがあれば工事も不要のため、手間や負担はなく、気軽に切り替えられます。節約方法のひとつとして、ぜひ選択肢に加えておきましょう。

まとめ

冬になると気になるエアコンの電気代は、1日9時間の利用で約27~423円です。エアコンごとの消費電力や性能、使う環境などによって異なりますが、場合によっては月あたりの電気代が1万円を超える可能性もあります。

電気代を節約しながらエアコンを使いたいなら、ほかの暖房器具と併用する、設定温度を控えめにするなど、使い方や使う環境を工夫することが大切です。

また、暖房にかかる電気代が気になりはじめたら、電力会社やプランの見直しもおすすめです。おトクなサービスのある電力会社、ライフスタイルにピッタリのプランを選ぶだけで、暖房器具の使い方を変えなくても電気代を削減できる場合があります。

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この記事を監修した人
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新井 智美(あらい ともみ)

1級FP技能士・CFP

2006年11月 卓越した専門性が求められる世界共通水準のFP資格であるCFP認定を受けると同時に、国家資格であるファイナンシャル・プランニング技能士1級を取得。2017年10月 独立。主に個人を相手にお金に関する相談及び提案設計業務を行う。個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス(、企業向け相談(補助金、助成金の申請アドバイス・各種申請業務代行)の他、資産運用など上記内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、執筆・監修業も手掛ける。